音響効果な日々

エフェクター解析・製作するで!

【準備その②】EQD Life Pedalとはなんぞや

前回のつづき

t-tone-works.hatenablog.com

 

 回路図の続きです。

前回はディストーション回路の増幅部まで見ていきました。

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今回は残りのクリップ回路、トーン回路、ブースト回路、電源回路を見ていきましょう。

 

ディストーション回路(クリッピング)

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元々のRATは増幅回路の後ろにGNDへ繋がるクリッピングダイオードがあります。

RATの場合、1N4148を使用した対称クリップが採用されておりLife Pedalでも同様のダイオードが選択されています。

Life Pedalで選択できるクリップ方法は3つ。

  1. OpAmp(クリップ無し)
  2. Asymm(シリコンダイオード+LED非対称クリップ)
  3. Symm(シリコンダイオード対称クリップ)

RATよりも音作りに幅があるので楽しそうですね。

 

クリップ方法によって歪み方はそれぞれ違いがあります。 

 

・クリップ無し

クリッピングしない方式の場合、増幅の限界を越えた部分が歪みになります。

いわゆる音割れに近いもので、一般的なオーディオアンプではNGとされる部類。

 

・対称クリップ

スムーズな歪みでオーバードライブに向き。

TubeScreamerなどはこれに該当します。

 

・非対称クリップ

クリッピングが非対称のため波形が上下で異なり、対称クリップには無いハーモニクスや歪みが生まれます。

OD-1なんかがそうです。

 

あくまで「だいたいそんな感じ」ってだけで、実際にはクリップ位置や全体回路によって大幅に変化します。

狙った音を出すために各メーカーは試作、改良を繰り返して製品化しているのでしょう。

 

個人的な意見ですがクリップ無しって結構好き嫌いが分かれるイメージがあります。

どうしても荒い歪みになってしまうしサスティーンも劣る感じがあるので、選択方式にしても結局はシリコンダイオードに落ち着く人って多いんじゃないの?

あまり有用な手段とは思いませんが、RATでクリップ無しってのは試したことないので気にはなりますね。

 

Life pedalで面白そうなのが非対称クリップ部分。

シリコンダイオード対称クリップの片側だけLEDを追加して非対称クリップを形成しています。

これやったことないけど、どんな音になるんやろ?

内部写真を検索してみたところ、このLEDは3mm赤色のようです。

 

ちなみに、LEDって色によって歪み方が若干変わるんです。

これは色によって順方向電圧と順方向電流の特性が異なるからなんですが、エフェクターでよく使用される赤色LEDは青や緑に比べて歪みやすいんですよ。

ここら辺を使い分けている有名なエフェクターがShurのRiot。

赤色LEDの対称クリップとダイオード+青色LEDの非対称クリップを選択できるようになってるんですよね。

実際にはどのクリッピングが回路に合うかは組んでみなければ分かりませんが、こういった部分でもRiotの完成度の高さがうかがえます。

 

ディストーション回路(トーン)

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 トーンは基本的にはカット方向のパッシブ回路です。

可変抵抗100KΩ+1.5KΩと3300pFの組み合わせでローパスフィルターが形成されているので、高域が削られていきます。

ここで、なぜ3300pFという値のコンデンサを使用しているのかという疑問。

これはRATの可変抵抗器が全てA100KΩで構成されているため。

古いBIG MUFFもそうなんですが、これは同じ可変抵抗器を使用してコストダウンすることが目的だろうと思われる。

そしてPROCOは現在も頑なにこのスタイルを続けてます。

そこを尊重してからか、同じくAカーブ100KΩを選択するEQD。

ここら辺にRAT愛を感じますね。

まぁ、RATを使い慣れてたら少し変わるだけで嫌なのかもしれませんが。

 

ディストーション回路(出力バッファー)

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ここも入力部と同じくJ-FETトランジスタのPF5102を使用したバッファー回路になってます。

出力部は最終段に可変抵抗を置くスタイルですね。

よくあるパターンです。

 

ブースター回路

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これ、まさしくSuper Hard On(以下SHO)ですわな。

BS170を使用した1石ブースターです。

このブログでも過去にLandgraff Clean Boost(以下LCB)を製作したときに見ましたね~

t-tone-works.hatenablog.com

回路は少し変更されているようです。

バイアス抵抗の値も変わってるし、入力部からGNDに接続された100pFあります。

これは増幅段前の発振防止用かな? 

また、SHOやLCBはソースに接続した抵抗を変化させて増幅率を調整したのに対し、Life Pedalは100%増幅して最終段で可変抵抗により音量調整する方式。

RATの後段でブースト専用としているためでしょう。

 

Life Pedalは電子リレースイッチ仕様トゥルーバイパスのFlexi-Switchという設計となっている為、ディストーション回路とブースター回路が完全に独立しています。

 

電源部

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電源部は以外とシンプル。

9V入力から回路保護用のダイオードがあり、表示用LED2個とデカップリングコンデンサ100uF、0.1uFが続いてます。

ここら辺もRATと同じような作りですな。

VAは9V出力、VBが4.5V出力となっており、他のエフェクターと大して変わりません。

 

 

 

ざっくり進めたけど私はこんな感じの認識です。

やはり中心となるのはRAT回路でしょう。

それにしてもこの組み合わせを1台に入れてやろうってなSunn O)))やEQDの感性はスゴイですな。

次回は製作~

ではでは~

 

t-tone-works.hatenablog.com