音響効果な日々

エフェクター解析・製作するで!

【回路解析】Jaw Breakerという隠れた逸品

久しぶりの回路解析!

実は最近エフェクター買いましてね。

買ったらすぐにバラシてしまいたくなるのは自作ッカーの性というものでしょう。

今回解析するのはこれ!

 

Jaw Breaker JBK-1.0/ Boot-leg.

 

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ご存知の方も多いでしょう。

このブログでも過去に同社の「ROCK'N ROLL PARTY 2.0」を解析しました。

私はBoot-Leg.が大好きなんすよ。

んで、たまたま中古のJaw Breakerを見つけたので即買い。

この記事に至ります。

 

さて、Jaw Breakerは歪み系ペダルなんですが、公式HPの説明文がなんとも良い。

重厚な低音。幾重にも重なる贅沢な倍音。決してピーキーすぎない高音。そんな、ギタリストの切なる思いを一つの箱に閉じ込めました。」

ふむふむなるほど、分からん。

手っ取り早く動画見ましょう。

youtu.be

良い歪み方ですね。ゲイン幅が広くて少し荒っぽい部分も残っている。

ローゲインでは生々しさが際立ってます。

このエフェクターのコントロールは3つ。

  1. LEVEL / 出力音量をコントロール
  2. HEAVY / 低音の重量感(0位置で本来のサウンド)
  3. BREAK / 歪み量のコントロール

特に重要なのがHEAVYツマミでしょう。

弾いてみた感じはRATのFILTERに近い感覚でした。

でもRATよりも扱い易く、出せる音色が多いので、一台持っておくと何かと便利なペダルですね。

ノイズもかなり少ないので弾いててストレスがありません。

ピッキングニュアンスが出しやすく、ボリュームへの追従性も非常に良いので、演奏者の腕が無ければ使い難い歪みペダルと言われても仕方ないです。

 

私はかなりお気に入りなエフェクターでした。

うん、中身を見てみたくなりますよね(笑)

中身の写真はこんな感じです。

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オペアンプの品番が削られています。
同社ではよく見る光景ですが、パターンと周辺の部品から見れば何となく分かってくるでしょう。多分クアッドオペアンプかな。

それじゃとっとと回路解析していきましょうか。

 

 

回路図

まずは回路図をどうぞ

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PDFはこちらからダウンロード可能

https://drive.google.com/file/d/1wf4-8uM8qQqtXf4QcI8Tx8dFgle2EWuX/view?usp=sharing

 ※6/6一部定数を読み間違えていた為、訂正しました。

そんなに特別な回路ではなさそうです。

これは私が実際にトレースしたものです。

ネットでいくつか回路図が出回っていますが、正しいものも間違っているものも散見されますね。

調べたところオペアンプはやはりクアッドオペアンプのようでした。

回路図には一応TL074と記載していますが、実際のオペアンプの型番までは謎です。

さて、Jaw Breaker JBK-1.0は以下のような回路で構成されています。

 

 

 早速それぞれを見ていきましょう。

 

 

 入力バッファー

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Boot-reg社ではお馴染み?のオペアンプバッファーですね。

入力からバイアス電源で4.5Vを印加してオペアンプでボルテージフォロア回路を形成してます。

こうすることでインピーダンスをハイからローへ変えています。

有名なのはKLON CENTAURですね。

 

増幅回路

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割とよく見る回路ですね。

面白いのはクリッピング用のダイオード、1N4002が非対称で配置されています。

クリッピングに整流ダイオードを使用しているエフェクターはあまり見かけないです。

ここがJaw Breakerの音作りのキモだと思われます。

BREAKツマミはA1MΩが配置されており増幅率は最大で約180倍となります。

ここだけでは少し歪みが足りないため次段でも固定で増幅されています。

ここでは常に約20倍ほど増幅されています。そのためJaw BreakerはBREAK(Gain)を絞り切っても僅かに歪みます。

増幅段を2段にすることで、幅のある歪みを実現していますね。

 

RRP2.0の時もそうだったんですが、クアッドオペアンプなので1回路余ります。

無接続の回路を残すとあまり良くないらしく、Jaw Breakerでも余った回路にバイアス電源を接続しています。

クアッドオペアンプを使用している理由はいくつかあるでしょうが、デュアルオペアンプを2個使うよりも部品代が安く上がるのが大きいのではないかと思ってます。

なんで自作するならデュアルオペアンプ2個とかでも問題ないでしょう。

 

 

 トーン回路

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トーンは意外なことにパッシブフィルターのカット方向のみとなっており、最終のレベル調整も含めてかなり簡素な構成になっていました。

フィルターは10uFと可変抵抗のハイパスフィルター+可変抵抗と0.01uFのローパスフィルターで形成されており、この調整具合が絶妙なのでしょうね。

RATと同じように上げていくことでローが増えますが、最大にしてもRATのようにモコモコで使いものにならないレベルではないように感じます。

 

 

電源回路

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よく見る電源回路ですよね。

VAが9V、VBは10KΩ×2本で分圧された4.5Vで出力されています。

バイパスコンデンサが9V側で0.01uF、4.5V側で100uFを配置。

9V側にも100uFくらい必要なのでは?と思ってしまいますが、どうなんでしょうね。

ここの設計はRRP2.0でも同様でした。

部品代の節約なのか、意図してこういう配置にしたのか。

そういうところを考えてみるのも趣があって楽しいんですよね。

 

 

スイッチ周辺の配線

写真でも見て分かるように、Boot-leg社のフットスイッチはDPDTが採用されています。

ここで「バッファーか何かがあるの?バイパス音は?」ってなる人がいるかもしれません。

では現物から書き出した回路&実体配線図を見てみましょう。

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こんな感じです。

フットスイッチに番号を書いてます。

では信号の流れと回路の動き方を見ていきましょう。

エフェクトOFF(2-3、5-6が接続した状態)

①INPUT→3→2→OUTPUT

②エフェクト回路→GND

エフェクトON(1-2、4-5が接続された状態)

①INPUT→エフェクト回路→1→2→OUTPUT

②LEDカソード→GND

 

どうでしょう。ほとんどトゥルーバイパスの動きですよね。

これはなかなか良く考えられてて勉強になります。

スイッチの6に接続された部分、基板側を追っていくと抵抗100Ωが配置してあります。

これは回路からの出力をエフェクトON時に信号が別のところを通ってしまわないようにするために配置されています。

この配線方法はRRP-2.0でも同様でした。

 

なぜここまでDPDTに拘るのか?

私自身、Boot-leg RRP-2.0を10年以上使用していますが、不思議とスイッチに不具合を感じたことがありません。

ライブでは思いっきり踏み付けまくってますが、ノイズも感じません。

このスイッチは押し心地が一般的な3PDTスイッチより少し軽く、適度なクリック感もあるのでかなり踏みやすい。

Boot-leg社がこのスイッチに拘るのは恐らく踏み心地と耐久性なのでしょう。

 

 

さて、回路解析はこれで終了。

次回はこれを製作して本家と比較してみようと思います。

買ったばかりのエフェクター(中古だけど)があるのに製作するのもあまり意味が内容な気がするけど(笑)

 

ではでは~