以前から作りたいと思っていた一台がありました。
コンパクトエフェクターの最先端に存在するメーカーから輩出されたそのペダル。
私も現物を見たことは無く、「名前だけは知ってる」程度だったんです。
今回作るエフェクターはこれ
Slow Gear SG-1 / BOSS
コンパクトエフェクターの老舗BOSSから1979年5月より1982年2月までのたった3年足らずしか販売されていなかったらしい。
売り文句は「恐怖の速弾きバイオリン奏法」だったとか。
バイオリン奏法はギターのボリュームか、ボリュームペダルを使ってピッキング時に音を消し、徐々に音を出していくことでバイオリンのような音色にする手法。
それを足元のペダルで自動でやってしまおうってんだからBOSSの発想が凄いです。
まずはどんなエフェクターなのか動画で見てみましょう。
ふむふむなるほど。
たしかにバイオリン奏法といえばそう聴こえる。
ツマミはSENSとATTACKの2種類です。
SENSEツマミで入力に対する感度を設定し、ATTACKツマミでエフェクトの掛かり具合をコントロールするようですね。
レビューなんかを見てると単独で使用するにはピッキングなどをなるべく揃えないと適切な効果が望めないようで、動画でも結構調整してますね。
どうやら設定がかなりシビアなようです。ここら辺も人気無かった要因なのかな?
なかなかピンポイントな機能のペダルなので当時はあまり人気がなかったようです。
まぁ、バイオリン奏法がやりたい人は普通にボリュームやボリュームペダルでやるだろうしね。
しかし、昨今においてはこのペダルもプレミア化が進んでおり、中古市場では4万円を超えるようになってきました。
販売数が少ないってところで希少価値が上がっているようです。
BOSSも同じようなペダルをもう一度出してみても面白いと思うんだけどなぁ。
それじゃ回路図見てみましょうか。
回路図
PDFはこちらからダウンロード可能
https://drive.google.com/file/d/1A_JvZqzFJvo_L5BURhswZPq66IQD46l-/view?usp=sharing
SG-1の回路図は結構出回ってるんですが見難かったり値が違ってたりしてまして、発狂しそうになりながら回路図を見比べてました。
BOSSの初期試料のようなものまで行きついたんですが、これがまた古い資料で解像度が悪い...
なるべく見やすいように回路図を製作しました。
細かいので見たい人はPDFでダウンロードしてください。
各部品は資料に基づいた部品を書いてますが、現代ではまず手に入らないものばかりです(笑)
大きな流れは入力バッファー、全波整流回路、出力制御回路、出力バッファーってな感じですかね。
正直な話、私はどういう動作なのかフワっとしか理解出来てません。
色々調べて「だいたいこんな感じだろ」ってなことで書いていきますんであしからず。
あ、入力バッファーはよく見る回路なんで割愛。
全波整流回路
はいここ。
入力バッファーから分岐した部分です。
まずSENSツマミが感度になるのですが、入力バッファーからの信号を調整します。
この回路に入る信号が大きいほど感度が良くなる。
そしてシングルオペアンプがあります。ここの動作はいつもと同じで非反転増幅回路になってます。
かなり大きな増幅になりますが、音には影響ありません。
そして2SC945というトランジスタがありますが、コレクタとエミッタ両方とも信号が流れるようになっています。
過去記事のTentacleと少し似てますよね。
これはCE分割回路と言うもので、エミッタ側の正相、コレクタ側の逆相を別々に取り出す回路になります。
そしてCE分割回路からさらにトランジスタが接続されています。
これが全波整流回路というらしいです。初めて知りました(笑)
交流の音声信号から安定した直流を生成します。
そしてATTACKツマミでどの程度流すかを決定し次の回路へ。
現代ではオペアンプを使用した方式が一般的なようですが、当時としてはICが割高だったためにトランジスタを採用したのかな?
なんにせよ、BOSSの技術者が考え抜いた結果だったのでしょうね。
電圧制御回路
ここがSlow Gearのミソ。
2SK30ATMというBOSSではよく使用されているNチャネルJ-FETトランジスタが使われてます。
J-FETトランジスタはG(ゲート)、D(ドレイン)、S(ソース)で制御されます。
NチャネルJ-FETトランジスタの場合、G(ゲート)に掛かる電圧が高ければD(ドレイン)、S(ソース)間の抵抗値が下がり電流が通る仕組みになってます。
さて、回路を考察してみます。
ギターから入った信号は入力バッファーを通過したのち、上の1µF電解コンデンサ2個を通過して出力バッファーへ入力されます。
しかし、入力信号が大きければ全波整流回路から出力された電圧がゲートに掛かることでドレイン、ソースの間の抵抗値が下がり信号はコンデンサを通じてGNDに落ちる。
入力信号が減衰してくるとゲートに掛かる電圧値が下がってくるためドレイン、ソース間の抵抗値が上がり、次第に出力バッファーに流れるようになって音が出る。
こうなると入力した時点では音が出ないが、次第に音が出てくるのでバイオリン奏法が可能になるという仕組みでしょう。
私はこう解釈しましたが自信はありません…
間違ってたらすみません...
色々と調べたところ、ここの半固定抵抗10KΩは「一番効果が出るポイントに調整」するものらしいです。
どのくらいの抵抗値で設定されているものなのか分かりませんが、部品や個体差などによって変化するんでしょう。
ここのツェナーダイオードはJ-FETトランジスタの動作を決定するために配置されているものだと思われます。
出力バッファー
ここもエミッタフォロアのバッファー回路なのですが、エミッタに繋がる1MΩ抵抗器がいます。
コイツはさっきの全整流器回路から出力された部分に繋がっているので、出力時にも電圧部分を制御しているのでしょうがよくわかりません。
分圧されてほとんど流れないはずです。
う~ん、なかなか難解な回路です。
理解できてない部分が多々ありますが...まぁ、だいたいこんな感じでしょうよ。
「全然違うやんけ!」って詳しい方、教えてください...
それにしても、0.5uFや30uFなどという電解コンデンサが時代を感じますね。
値の精度は別として、今じゃそんな値は製造されていないのでこういった部分もレアでしょうね(笑)
それじゃ次回は製作編。
ではでは~