音響効果な日々

エフェクター解析・製作するで!

【準備】CORNISH OC-1ってヤツが良いらしい

今回は超有名なPete CORNISHのエフェクターを自作していきまっせ!

 

 

そもそも私はお恥ずかしながらCORNISHってエフェクターメーカーを最近知ったんですが、かなり古いメーカーでして1980年代から存在するんです。

そんな中で今回製作するのがこれ

Pete CORNISH OC-1

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 OC-1は「Optical Compressor」(オプティカルコンプレッサー)の略。

国内正規代理店のHP→http://tonegold.shop21.makeshop.jp/shopbrand/P-BF/

なんと言っても価格が一つ飛び抜けてるのが目を引きますよ。1台/7~10万円くらいします(笑)しかも新品の価格ですよ?

しかも!このエフェクターはケースに封印シールが貼られており、開封したら最後、メンテナンスは受けられない。

そこまでしても売れているのには何があるんや?

 

まずは動画で見てみましょうや。

youtu.be

これはたしかに良い、凄くナチュラルなエフェクト。

 

コンプレッションを深く掛けても不自然な変化にならず、それでいてハリが出るような感じ。

あまり演奏動画とか操作感を映してる動画が無いのが残念です。

カッティングとかだとどうなんでしょうね。

動画ではON/OFFの比較なんかが少ないので製作後に確認してみましょう。 

 

 

とりあえず回路図を見る

さすがに8万するエフェクターを分解して解析してやろうなんていうヤツは居ないだろうなぁ...

なんて思いながらネットで調べてると...

 

えっ!おる!?

 

そう、海外にはどんなことをしても回路を解析したい猛者がいるんですよ。

今回、回路図をお借りしたサイト様がこちら

https://aionelectronics.com/

aionelectronics.com

そして解析をした記事がこちら

aionelectronics.com

X線まで駆使して解析するとは...スケールが違います(笑)

内部写真については上の記事で見てみてくださいな。

ちなみに基板はすべてモールドされており、定数などすべて確認不可。それを削り出して調べ上げたようです。

 回路図は以下からダウンロードしてください。

https://aionelectronics.com/wp-content/uploads/2019/11/cornish-oc1-trace-schematic.pdf


 

さて、こいつはオプティカル(光学式)コンプレッサーなんですが、オプティカルって言うとカッコよく聞こえるし、高級そうなんやけど、実際はそうじゃありません。

コンプレッサーってのはざっくり言えばギター(ベース)信号が入ってきたときに大きい音を小さく、小さい音を大きくして音量の一定化をするエフェクターです。

入力された信号のピークを検出して音量を調整する方式に光学式という方法があるってだけなんですよね。

ICとトランジスタで検出、調整する方法もありますしこっちの方が応答性が良いから一般的だと思います。

光学式の方がエフェクトがナチュラルに掛かる傾向があるんですが、これは好みですわな。

 

 

さて回路図見ていきましょう。

まずはバッファー回路。これはCornishバッファーと呼ばれるやつです。

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KLON Centaurのバッファーに並ぶ超有名なヤツね。私は最近知ったけど...

そこからクリーン回路を通過して出力されます。

クリーン回路の途中で分岐する部分にブレンド回路、ピーク検出回路があります。

 

 

次はクリーン回路。なにやら見慣れないものがあります。

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VACTROL_Bと書いてある部分。

そう、これがオプティカル(光学式)と呼ばれるところですわ。

これはCdSセル(フォトレジスタ)と呼ばれる電子部品で、光が当たると抵抗値が下がり、暗くなると抵抗値が上がる部品です。こんなやつ。

【10個入り】CdSセル 光可変抵抗器 5mm GL5528

面白い動作をするんで個人的には結構好きな部品です。

これにLEDを照射することによって抵抗値を変えて音色に変化を出してます。

今回の回路ではR13の10KΩとCdSセルで分圧回路が形成されています。

LEDが光ってCdSセルの抵抗値が変化すると入力信号がGNDに流れやすくなり、LEDの光が収まれば通りにくくなるのでコンプレッサーとして機能するんです。

 

ちなみに、CdSとLEDを組み合わせた部品にフォトカプラがあります。

CdSセルって個体差が結構あるんで最初からフォトカプラでもいいと思います。このサイトでもNSL-32を指定されてます。品番によって明るい時と暗い時の抵抗値が違いますんで注意してくだせぇ。(NSL-32の場合は明時40Ω、暗時400KΩ)

 

 

んで今度は下の方見ていきましょう。

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はいここ、入力された信号に対して分岐させてきたピーク検出回路の最後の部分です。一番最後のICでは出力されたものがトランジスタのベースに入力されてます。

トランジスタはベースに入力された信号の電流によってコレクタ、エミッタの電流を制御してます。

ベースに入力されるとコレクタ、エミッタ間の抵抗値が変化するのでLEDの光り方が変化してCdSセルの抵抗値を変えてます。

話だけだと少しややこしいかもしれませんけど、結構アナログなことやってるんですわ。

 

あと、BIAS可変抵抗20Kって書いてあり、「Bias set to 5.68K of 20.78K total Value(27% rotation) in unit traced」てなことが書いてあります。

バイアスの設定を1-2の間で27%に設定しましょう。ってことです。

こいつはBC550Cのベースに電流を与えるためにあるんですが、ここでオプトカプラのLEDをどのくらい常時発光させるかを決めています。

1-2間を0Ωに設定した場合、BC550Cのベースに流れる電流が大きくなり、LEDが強く常時発光することになります。そうなるとピッキングの強弱なんか関係なく常時コンプが効きっぱなしになりますんでコンプレッサーとして機能しません。

逆に2-3間0ΩだとGNDに流れてしまう為、弾いた時だけ光るようになります。しかしこれではクリーン回路で増幅させている音が丸々出力されるんで音量がめちゃくちゃ大きくなります。

そのためBIASを設定し、音量とコンプの効き具合がちょうどいいところを調整できるようにしています。

 

てか分解した回路がたまたま27%だった可能性もあるのかな?個体ごとに設定が違う可能性もありますね。結構キモな部分なので慎重に設定しましょう。

 

あと、LM4040CIZ-5.0ってな部品があります。これは高精度基準電圧という部品になりますが、ツェナーダイオードでもほぼ同じなので今回は5.1Vツェナーに置き換えて配置します。

 

 

そんでもってここ!電源!

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今回はなんと基板に供給する電源が4種類!まじかよ...

どうやらPeteCORNISHさんはずいぶん電源回路にお拘りのようです。

回路ごとに電源の設計を変えてるためにこんなことになってるようです。

バッファー回路にはVD

クリーン回路、ブレンド回路にはVAとVB

ピーク検出回路にはVC

ってな感じで分けてるますが、面白いのはVBの8.2KΩと10KΩで形成された分圧回路。

普通は4.5Vの分圧を作るために同じ値の抵抗を使用するんですけどここを変化させてます。どう変化するかは色々なんですが、一番は増幅した音に変化が発生します。

詳しい話はまた今度。話がながーくなるんでね...

この仕組みは現代の有名ブティックエフェクターVEMRAM Jan rayなんかでも採用されてるんですよ~

 

 

 

ずいぶんと話が長くなってしまった...

次!レイアウト!

これねぇ、めっちゃ悩んだんですわ。

なにせ部品点数が多いし電源周りも大きくなってしまう、でも1590Bには入れたい...

てなわけで色々考えながらレイアウトを調整しまくりましてようやく完成。

 

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PDFはこちらからダウンロード可能

https://drive.google.com/file/d/1thYBEsWBYA80bxBUwasn3Q3XaGdFtNda/view?usp=sharing

※このレイアウトは動作確認できましたが、部品の選定次第では部品が載りきらない場合があります!

製作する場合は注意!製作編にて写真を載せてますんで参考にしてくだいませ。

 

デカい...今回も部品が多いので抵抗は立てたりしてます。コンデンサ関係は種類によっては収まらないかもしれません。ポットの部分もいつものように配置することは諦めました。

LED抵抗も今回ばかりは基板に入れられませんでした...

今回も横幅キツキツなんで拡大or縮小する際は大きさに注意が必要です。

 

あと、今回はバッファー付きなのでフットスイッチはトゥルーバイパス配線ではありません。3PDTスイッチではなくDPDTスイッチですんでここも注意してください。

アウトプットジャックの部分にも抵抗がくっ付いていますが、これはバッファーorエフェクトアウト後に必要なので基板に入れてません。忘れないように注意してください。

これをユニバーサル基板で作るのはかなり厳しいと思います...

 

 

それじゃ部品表一覧

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 部品多い!

抵抗はすべてカーボン抵抗で作ります。

LM358APは省略して「LM358」みたいに売ってる場合がありますんでよ~く探すと見つかるかもしれません。割とよく見かけるLM358Nでも使用可能です。

保護用のダイオードは1N4001~7で大丈夫です。

Cカーブはあまり売っていないので代用するならBカーブにしましょう。

普通に自作するならNSL-32を使用してくだせぇ。

今回はたまたま手元に余ってたCdSセルと5mm超高輝度LEDを組み合わせてフォトカプラを自作してみようと思います。

BC549C、BC550Cが手に入りにくい場合は2N5088×2個で代用可能。

足の配置が違うので注意してください。

印字面からみるとこんな配置になります。

①BC549,550(C-B-E)

②2N5088(E-B-C)

代用する場合は向きを逆に付けましょう。

あ、ちなみに今回のレイアウトでは逆向きに取り付けるとスペースかなり厳しいんでちょっと変更が必要かもです。

半固定はモノによってA/Bカーブが設定されている場合がありますが、そのときはBで問題なし。

 

 

まずはここまで!今回は長くなったけど、

ここまで作者の拘りが凄いと新品で8万超えにも納得できる気もしますね。

次回は製作編!

ではでは~

 

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