さて、今回もFUZZですよ~。
以前、修理でお預かりしたエフェクターを解析して製作しようってな話ですわ。
今回のエフェクターはこれ~
FUZZ WAR / DEATH BY AUDIO
見た目からしてヤバいヤツです。
DEATH BY AUDIO(以降DBA)はニューヨーク発のハンドメイドエフェクターメーカーですが、ラインナップが超個性的なんです。
そんな中でも人気なのがFUZZ WAR。
DBAのメーカーサイトにサウンドサンプルが上がってますんで早速見ていきましょうや
どうすか?
動画ではかなり凶悪なサウンドですが、コントロールの範囲内なら意外と使える幅はあるんじゃないか?と思います。
ちなみにサウンドサンプルに登場する男性がDBAの創設者OliverAckermannです。
APlace To BuryStrangersというバンドで演奏してるミュージシャンなのですが、このバンドもノイズ系なんすわ。もうノイズでしか生きられない人なんでしょう。
んで、2002年にDBAを創設してもいまだにツアーをしてる凄い人です。
以前に製作したClari(not)も創設者のDoug Tuttleも現役でミュージシャンをやりながらペダルを製作してしまう人でしたが、こういった人たちが作るエフェクターペダルってライブなどの現場で培われたものが反映してる気がしてて凄く好きです。
パッと見た感じでは「変態」「轟音」「狂気」などで片付けられてしまいそうですが、サウンド自体はとても音楽的であったりするわけです。
実際に演奏するミュージシャンが自分の好みを反映してるわけですから実践で十分に使える音になるんだろうと勝手に思ってます。
但し、一般的でないことだけは確かですがね。
さて回路図見てみよう
実はFUZZ WARは2種類存在するのですが、最初に販売されたのが2008年頃のVer1で2ノブタイプ。その数年後に販売されたのがVer2で3ノブタイプ。
私が修理でお預かりしたFUZZ WARは2ノブタイプだったんですが、いろいろ調べてみると実はVer1の2ノブタイプにも何種類も存在するらしい...
内部写真は過去記事見てくださいな。
FUZZ WAR Ver1
2種類の内、一番初期のモデルで採用されていた回路図がこちら
実はこれ、普通のトランジスタ増幅ではありません。
パッと見た感じはエミッタ接地回路の増幅段に見えますが、矢印の方向が逆になっています。
いわゆるトランジスタを逆に付けた状態です。
実はこの場合でもトランジスタとして一応は動作します。
しかしながら、通常のエミッタ接地と比較すると増幅率が極端に悪く、破損の原因ともなります。なぜこんな回路にしたのか、まったくの謎です...
何かしらの意図があったのでしょうが理解できません...
恐らくですが、増幅率が小さいことを踏まえた上で7段も並べてるんだと思われます。正直、こういった回路はエフェクターでは見たことないです。
色々調べていたら、どうやら上の回路図は初期モデルのようで定数や部品数が若干異なったモデルも存在するようです。
私が調べた限りでは
その他にも抵抗の定数が微妙に変化していたりします。
試行錯誤の結果なので、どれが正解とかは多分無いでしょう。
ネットで探してみても回路図とは異なった基板写真や回路図が結構出てきます。
そういうのを調べてみるのも面白いですよ。
しかし、自作エフェクターの回路をネットで検索すると間違った回路図なんかが結構出てます。意図した変更なのか、ただの失敗作なのか、嘘なのか、真偽を自分で見極めないと作ったのに音が鳴らないなんてことになるんで気を付けましょう。
んで、クリッピングには1N34というゲルマニウムダイオードを使用してます。
こんなやつね。
エフェクターの自作ではたまに使用されるダイオードになります。
ゲルマニウムダイオードってガラスで出来てるんですよ。なんで足を曲げる位置が近すぎるとガラスが割れたります。注意しましょう。
上の写真では黒の線が入ってますが、緑なんかもあります。
上でも書きましたが、クリッピング段が2段の回路と1段の回路が存在します。
Freestompboxesのスレッドにこんな写真が出てました。
なんか試行錯誤を繰り返しまくってる感が出てますね(笑)
フットスイッチ上の27Kと記載された部分、元々は抵抗器がありましたが削除されてます。これに繋がるダイオードも動作しないのですが、なぜか取り付けされたまま販売されたようです。
中央右のコンデンサも基板には472(4700pF)と記載ありますが、680pFに変更されているようです。そもそも上の回路図には入っていし...
う~む、調べれば調べるほど謎が深まっていく...
FUZZ WAR Ver2
そして、期間は分かりませんが途中で回路がガラッと変わります。
変更された回路図がこちら
なんとトランジスタが4個、しかもトランジスタも普通の向きに変わってます。
この回路、何かと似てると思いませんか?
そう、BIG MUFFです。
なぜ独自の回路からBIG MUFFの派生のような回路に変更されているのか?
理由は定かではありませんが、初期モデルでは強烈で使いづらかったのかもしれません。
いや、多分そうだろ(笑)
BIG MUFFとの違いは各段の増幅率を変化させてます。
増幅しやすくしているようですが、大きな違いではありません。
しかし、TONEの部分では少し定数を変え、回路の一部も変更されています。
TONEの2番端子に接続されている680pFのコンデンサはハイパスと思われます。
BIG MUFFだとこれが無いのでTONEを絞ると低音が強烈に出てくるのですが、このハイパスのおかげで攻撃的なサウンドが生み出されているのでしょう。
クリッピングもBIG MUFFが2段なのに対して1段に変更されています。
歪み方を荒々しくしたかったのかな?
全体的に強烈なサウンドに仕上げた上で、扱いやすい音を追求した結果とも思えるような回路です。
余談ですが...
Ver2の3ノブタイプもトランジスタ4個の回路らしいです。
私の勝手な想像ですが、Ver1が2種類あるのはVer2を販売開始する前のプロトタイプ的な要素もあったのかもしれません。
お預かりしてた2ノブタイプの裏蓋に書かれた製作日は2011年4月13日。Ver2を出す直前だったのかも?と想像するとニヤニヤしてしまいますね。
さて、あまり長くなってしまったんで今回はここまで。
次回製作編。
Ver1もVer2も面白そうな回路で興味があるので...
どっちも作っちゃおうかな...(笑)
ではでは~