音響効果な日々

エフェクター解析・製作するで!

【準備】作って遊ぼうVEMURAM Jan Ray

明けましておめでとうございます。

2021年1台目のエフェクターは自作では超有名なヤツ。

私は過去に3台ほど作ってますが、良い音鳴るんですわ。

そんなわけで今回作るエフェクターはこれ

 

VEMURAM / Jan Ray

VEMURAM Jan Ray オーバードライブ

www.vemuram.com

 

言わずと知れた超絶名機ですよ。

Tri-soundという日本の会社が開発、製造、販売を行っているエフェクターです。

2008年の登場以来、特にJan Rayは人気ですね。

レビューなんかは腐るほど出てますんでわざわざ私が言うことなんぞ何もないんでしょうけど、一応書いときましょう。

このエフェクターはいわゆるFender Magic6のサウンドを意識して設計されました。

 

Fender Magic6とは

  1. フェンダーアンプ60年代ブラックフェイス
  2. ボリューム:6
  3. トレブル:6
  4. ミドル:3
  5. ベース:2 

 

 このような設定で出力される音作りを言います。

じゃあどんな音なの?ってなりますが、まずは試奏動画を見てみましょ。

youtu.be

煌びやかな感じや倍音の出方など、およそエフェクターとは言い難いほどの上質な歪み方ですね。

エフェクターよ言うよりはアンプに近い音がします。

シングルコイルとの相性は抜群ですな。

価格が4万円程度と簡単には手が出せないですが、この1台にはその価値が十分にあると認識させてくれます。

それじゃ次行ってみましょう。

 

 

まずは回路図

全体を見てもらいましょう。

 

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これね、超有名な回路図です。

全体像としてはTUBE SCREAMERと似てます。

しかし、前後段のバッファーが無かったり、BASSコントロールの部分が独特です。

詳しく内容見ていきましょうか。

 

最初に入力部

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最初R1の1MΩ抵抗はいつものプルダウン抵抗。

C2が入力キャパシタ、ここで入力される低音成分を制御。

エフェクターだとだいたい0.022~0.1μF程度が設定されます。

んでC1はノイズ成分を除去しているのかな?

R2の1MΩ抵抗はバイアス電源に接続しています。

 

そもそもバイアスってなんやねん。

エフェクターオペアンプを使うのに切っても切れないパートナー。

それがバイアス電源です。

音の波形は0Vを中心として±の波形となります。

しかし、エフェクターは直流電流なので0Vと9Vしかない。

0Vを中心とした場合、-側の信号はすべてカットされてしまいます。

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これじゃ音にならないのでバイアス電源を使います。

よくある回路ではバイアス電源は4.5Vが使用されてます。

9Vのちょうど半分の電圧を信号に加えることで、

4.5Vを中心とした0V~9Vの波形を形成できるようにしてます。

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多少違うところもあるかもしれませんけど、私はこんな感じの理解です。

他にも両電源ってのがあります。

±9Vを使うことでバイアス電源が必要ない回路を設計することが可能って話。

しかしながら回路が多少大きくなってしまうのが難点。

 

 

さて次、増幅ステージ

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シリコンダイオードを4個使用したクリッピングです。

ここのダイオードを非対称(2個:1個)にするとか、ゲルマニウムダイオードに変更するとかが改造ポイントとしては有名かな。

C3の47pFは発振防止用。高音域が増幅されて発振してしまうのを防いでいます。

ここの値は大きくするともっこりなりますので、必要最低限が良いでしょう。

Gainは500KΩの可変抵抗。

横の3.3KΩは最小時の増幅値を決めてます。

 

BASSコントロール

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ここがキモなところ。

TRIM10KΩはJan ray独自のサチュレーションコントロールになってます。

倍音が変化するようなコントロールです。

ここは9.1KΩと680Ω+10KΩとの並列合成抵抗となっており、

TRIMを調整することで約632.7Ω~約4.913KΩまでが調整可能になります。

そして、C5の0.039μFとローパスフィルターを形成することでコントロールされてます。

ここ、わざわざ並列にする必要あんの?って思ったんですがここはGAINコントロールにも影響してくるのでこうなってるんでしょうね。

んでベース部分、BASSの50KΩと1μFでフィルターが形成されてます。

オペアンプは差動増幅なのでLM4558の+入力と-入力の差が増幅されます。

そのためここでバイアス電源に落ちた成分がそのまま増幅される仕組み。

 

TREBLEコントロール

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ここは普通の回路。

1.2KΩと0.047μFで最小のフィルターを形成。

そこに10KΩを変化させることでローパスフィルターのカットオフ周波数が変化していきます。

ギターやベースのパッシブトーンと何ら変わりない回路ですね。

 

2回目の増幅段~出力

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ここは出力バッファー的な感じです。

発振防止用のC8の容量が大きくなってますが、これは前段で増幅してるから発振しやすくなっているでしょう。

出力キャパシタのC9は1μFが設定されています。

よくある回路でもここは1μF~10μFくらいでしょう。

そしてパッシブのボリューム回路が形成されて出力。

ここは簡単。

 

電源回路見てみよ

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入力のダイオードに1N4148が使用されてるのがなかなか面白い。

直列に配置した場合の電圧降下を配慮したのかな?

次いでバイパスコンデンサ、平滑回路がありますね。

ここら辺は定石なので割愛。

R9とR10で形成された分圧抵抗回路なのですが、これもJan ray独特の回路。

通常は4.5Vのバイアス抵抗を作りたいので同じ抵抗値にするのですが、

Jan rayでは9.1KΩと7.5KΩで形成されています。

で、どうなるのかと言いますと、バイアス電源の電圧が約4.07Vになります。

そうすると、音の中心を4.07Vで作ることになるので音の響きや増幅に影響が出ます。

これを意図して作っているんだから凄い。

ここの抵抗値を可変抵抗で作ってるエフェクターなんかもありますが、

しっかりとした設計がなければ手を出さない方がいいですよ。

 

 

Jan rayの回路を追ってみましたが、やっぱり凄いわ。

しっかりとした設計で感服します。

レイアウトとかは次回!

ではまた~

 

t-tone-works.hatenablog.com