前回のつづき
さて、今回は回路図を見ていきましょう。
回路図
前回の記事でお話した通り、今回はAion Electronicsさんのトレーシングジャーナルを参考にさせて頂きます。
解析記事はこちら
回路図は下記URLからダウンロードしてください。
https://aionfx.com/app/files/schematics/solodallas-storm-trace-schematic.pdf
Aionさんは凄いんですよ。
販売されているSTORMの多重基板を剥がしてまで回路を追跡してしまう猛者。
この写真もAionさんから拝借しました。
https://aionfx.com/app/files/2019/10/solodallas-storm-pcb-top-no_components.jpg
他にもいろいろ写真を載せてくれているのでぜひ見てみることをオススメします。
さて、STORMは大きく分けて3つのセクション+電源回路により分けられています。
それぞれ見ていきましょう。
プリゲインコントロール回路
ここは入力された信号を増幅しています。
さっそくVACTROL_Bと出てきてますが、ここの抵抗値を変化させることで初段の増幅率を変化させ、リミッター回路として機能させています。
リミッター回路については後で書くことにします。
増幅回路はよく見る非反転増幅回路ですね。
BOOST可変抵抗器の直後にR20 OMITと書かれた抵抗の表記がありますが、これは実際には接続されておらず、Aionさんによると解析した際に120pFのコンデンサは基板上にどこにも繋がっていなかったらしいです。
抵抗部分はジャンパーが配線できるようになっていたことから、何等かの調整用として配置されているようです。
Aionさんの分解記事では基板上に「入力RFフィルター」と記されていたとのこと。
RFフィルターってのは俗に言う高周波フィルターのことですが、プリゲイン+ブースト回路なので必要に応じてフィルターを有効/無効にできるようになっているのでしょう。
同じように入力時に小さいコンデンサを入れてある回路にJan Rayがあります。
どちらも音の調整が非常にシビアなのでしょうね。
光学式リミッター回路
プリゲイン回路で出てきたVACTROL_Bの相方がいるところです。初段で増幅された信号は出力側とリミッター側で分かれます。
リミッター回路ではプリゲインコントロール回路で増幅された信号がオペアンプで反転増幅されVACTROL_AのLEDを光らせてプリゲインコントロールの増幅率を変化させています。
こうすることで入力信号が大きければ増幅率は小さくして、入力信号が小さければ増幅率は大きくすることでリミッター回路を成立させています。
BAT42はショットキーバリアダイオードですが、変わった配置になってますよね。
これは恐らく、LEDへ入る電流の方向を一定に保つためなのでしょう。
そしてここでもOMITと記載されたコンデンサがあります。
これはLEDの発光を制御するために配置されているようですが、切り離している理由はなんなのでしょう。理由は分かりませんが入力部と同じような調整用なのでしょうね。
左下に2KΩの抵抗器が2本並列に配置されてます。
並列抵抗の場合、ここの抵抗値は1KΩになります。
え?それじゃ1KΩ1本で良くね?
これはAionさんも言及されていました。
これは恐らく部品の種類数が関わっているのではないかと思われます。
この回路図、1KΩって無いんですよ。
でも2KΩはリミッター回路以外に4本も使用されています。
ここだけ1KΩを用意して入れるくらいなら2KΩで代用してしまえ!ってな感じではないでしょうかね。
コストダウン目的だと思われます。
クリーンブースト回路
出力前の増幅回路です。
過去記事でも何度も使用したお馴染みのパワーアンプIC、LM386Nが使用されています。
出力コンデンサがあり、最終のLEVELツマミが配置されて出力へ。
こうして見てみると、入出力コントロールの配置だけはかなりシンプルに設計されてますね。
まぁ、入力から出力の過程がなかなか複雑な回路ですので、かなり緻密に計算された回路なのは間違いないでしょう。
電源回路
さて最後に電源回路。
STORMでは3つの電源を使用します。
初段プリアンプ回路、リミッター回路にはVA、VBを使用し、ブースト回路にはVCを使用しています。
これは電圧の揺れを防ぐ目的なんでしょうが、なかなか厳重な配置になってますね(笑)
電源回路にしては部品点数が半端じゃないです。
CORNISHさんの時もそうでしたが、電源までしっかり拘って設計された回路ってなんか綺麗で良いですよね。
電源回路って技術者の腕が試される重要な部分だと思うんですよ。
そういった点でもフィル・オリビエリさんはホント優秀な技術者なのだろうと感じます。
長くなりましたが、一先ず回路はここまで。
次回は製作編!
ではでは~