今回は基板製作の話です。
私がエフェクター製作を始めるにあたって一番最初に問題になったのが
「どうやって基板を作るの?」
でした。
なんとなく、販売されてる製品みたいにカッコいい基板を作りたい!って思ってたんですが調べれば調べるほど分からなくなり、最初の基板を作るまでに長い時間を費やしましたよ。
右も左も分からない状態で部品屋さんに行って、
何も買えずに帰ってきたりもしました(笑)
そんなときのために!ここで!製作方法書いてくで!
なにせ私は数多くの基板を無駄にし、ゴミ箱に投げ入れてきましたからね。
私なりに分かり易く、詳しく書いていきますんで参考にして頂ければと思います。
①ユニバーサル基板で製作
まずは、誰もが最初に行きつく場所。
それがユニバーサル基板です。
簡単な回路作るんだったらこれが一番おススメ。
これはあらかじめ穴が空いている基板になりまして、こんなヤツです。
ユニバーサル基板 (PCB 50mm×70mm 432穴) 25枚セット
これに部品を載せて配線していきます。
配線方法なんかは過去の記事にて紹介してますんでこちら↓を見てくだせぇ。
ユニバーサル基板のメリット
- 穴空け済みなので配線が簡単
- ポイントトゥポイント配線
- 安い
- 道具が少なくて済む
ユニバーサル基板のデメリット
- 配線作業に時間が必要
- 複雑な回路には不向き
- 配線を間違うと修正が悲惨
- 配置を間違えたときに部品が外しにくい
私は部品点数が少ない基板だといまだにこれを使います。
過去にKLON Cantourをユニバーサル基板で製作したときには3枚くらいゴミ箱に放り投げましたよ。デメリットでも書きましたが、部品の足同士を配線する為、取り外しが面倒なんです。エフェクター製作してると、配線した後に「音が出ない」なんてことが日常茶飯事で発生しますから、複雑な回路であればあるほど絶望感がハンパないです。
あと、ユニバーサル基板にも種類があるんですが、
見た目がカッコいいからって理由で安易にガラスエポキシ基板や、ガラスコンポジット基板なんかを買うと大変なので注意。
固いんですわ。基板を目的のサイズに合うようにカットしようとしてもなかなか切れません。
悪いことは言いません、最初に買うなら紙フェノールにしなさい。
②生基板で製作
次は生基板から製作する方法ですわ。
ある程度複雑な回路を組むならこれがおススメ。
生基板てのはこんなヤツ。
生基板の製作方法については過去の記事↓を参考にしてくだせぇ。
生基板のメリット
- 自由度が高い(パターン、大きさなど)
- 部品取り付けが楽
- 配線作業が短時間で済む
- 間違えたときも取り外し簡単
- 見た目が綺麗
生基板のデメリット
- 製作に必要な道具が多い
- 取り扱いに注意が必要な部材を使用する(エッチング液)
- ある程度の時間は掛かる
- 穴空け加工が必要
- 経年劣化による腐食や緑青を防ぐ保護作業が必要
今はほぼこれで製作してます。
慣れれば短時間で基板が出来上がるんですが、準備が大変なんですよ。
あとエッチング液、これ取り扱いを間違えると大変な事故になりますんで注意してください。しっかりと下準備を行ってから始めましょう。
あと道具を揃えないといけないので意外とお金が掛かります。
穴空け加工するにしてもハンドドリル、ビットも揃えて...とまぁ初期投資が必要なやり方。
でも、製品みたいな綺麗な基板を自作するのは憧れなんですよね~
それから、自分でパターンを作りたいって人はPCのソフトも使います。
私が使ってるパターン製作ソフトはDIY Layout Cleatorってやつです。
ダウンロードはこちらから↓
DIY Layout Cleatorは使い方も分かり易いんでおススメです。
記事に載せてるレイアウトもこれで作ってます。
いつか使い方なんかも記事にしようかな。
③感光基板で製作
これはいままで紹介したことなかったやつです。
緻密な回路を組んだり、大量製作が必要な場合にはこれがおススメ。
ただし、個人で少量作る場合はあまりおススメしません。
なんでかってのは下のほうで書きますね。
まず、感光基板ってなんぞや?ってなりますよね。
感光基板というのがこちら
サンハヤト クイックポジ感光基板(片面・紙フェノール FR1)1.6t×100×150 NZ-P12K
いや、ようわからんわ。謎の銀包装にくるまれたヤツ。
感光基板というのは、文字通り光に当てることによって基板製作を行う方法です。
まず必要なものから書きましょう。
- 感光基板
- エッチング液
- 現像液
- 感光基板用インクジェットフィルム
- インクジェットプリンター
- 感光クランプ
- タッパー又はジッパー付の袋×2
そう、なぜ説明していなかったかというと用意するものが多いんですわ。
じゃあなぜ感光基板で作るの?ってなるのでメリット、デメリットを紹介します。
感光基板のメリット
- 細かなパターンが転写可能
- 自由度が高い(パターン、大きさなど)
- 部品取り付けが楽
- 配線作業が短時間で済む
- 間違えたときも取り外し簡単
- 見た目が綺麗
- インクジェットプリンターで製作可能
感光基板のデメリット
- 製作に必要な道具が結構多い
- 取り扱いに注意が必要な部材を使用する(エッチング液、現像液)
- ある程度の時間は掛かる
- 穴空け加工が必要
- 経年劣化による腐食や緑青を防ぐ保護作業が必要
- 感光が失敗した場合に修正できない
基本的には生基板と同じですが、非常に細かなパターンも転写できます。
また、一度にたくさん製作できるので場合によってはメリットが多いです。
しかし、基本1枚単位でしか製作しない個人で扱うにはあまりメリットではないかもしれません。
あと、生基板で個人製作する場合、一番問題なのはレーザープリンター(トナープリンター)じゃないでしょうか。
私は会社にあるプリンターを間借りさせてもらってますが、
「一般家庭にレーザープリンターなんてあるわけねぇだろ!」
てなりますよね。
なんで、多少の金額に目をつむればインクジェットで製作可能です。
では製作過程を見てみましょうか。
まずは感光基板用インクジェットフィルムに必要なパターンを印刷します。
A4サイズしかないので必要に応じて切って使いましょう。
フィルムをプリンターにセットし、パターンを印刷します。
あらかじめ正しいサイズで印刷できるか試してください。感光基板用のインクジェットフィルムは高いので失敗はご法度...
印刷したものがこちら
ここから感光に入ります。
感光基板はうっすら青色です。こいつが溶けてパターンのマスキングになります。
クランプで挟み込み、強めの蛍光灯などに当てて約10分ほど放置します。
感光基板はこの作業が重要です。均等に光が当たるようにしましょう。
ちなみに、取扱説明書によれば露光時間はパターンの複雑さなどにより若干変化するらしいですが、私はだいたい10~12分です。
経験上、これ以上やるとパターンまで溶ける確率が高くなります。
また、露光時間が短いとパターンが綺麗に出なかったり、エッチングで溶けなかったりします。
この次の作業で現像液に浸けるんですが、蛍光灯の光が当たった部分は溶けて、当たらなかった部分が残るんです。残った部分がマスキングとなり、エッチングしても綺麗な状態が出来上がるんです。
露光が終わった状態です。
ほんとわずかに色が変わります。
今度はこれを現像液に浸けます。
現像液はこれを使います。
ぬるま湯に溶かすだけで現像液が出来ます。
基板を現像液に浸けて少し揺すると露光した部分が20~30秒で溶けて綺麗なパターンがこんにちわ。
温度が高かったり、浸け過ぎると残したい部分まで溶けてしまうんで注意が必要です。
現像液はそのまま排水に流せません!!
エッチング液と同様に絶対ダメです。
何度も使えるので置いときましょう。
基板は水洗いしてエッチングにドボン!またさらにしばらく待つ。
そしてエッチングが完了したら基板のエッチング液をふき取り、水洗いします。
こんな感じ。
そしたら再度光に当てて10分放置。
最後にもう一度現像液に浸ければマスキングが取れて綺麗な基板がこんにちわ。
ってな感じです。
読んだだけでも面倒でしょ?
もしもやりたい!って人はこちらを買うことをオススメします。
私もこれ使ってますけど便利です。
これだけでパターン印刷から基板完成まで全部できますよ。
ちなみに、インクジェットプリンターで印刷したパターンは何度も使用可能です。
そのため何度も同じ基板を大量に製作する場合は非常に生産的と思う。
【個人的な意見】
基板の性質上、カットしてから使おうとしてもほぼ100%露光されてしまい、 綺麗なパターンが作れません。1枚だけの製作なら生基板をカットした方がコスト的には圧倒的に経済的です。
あとね、さらさらっと説明してますけど結構失敗しました。感光に失敗して仕方なく結構な枚数を生基板として使ったりしましたよ...
価格も生基板の3倍くらいするので辛い...
廃液処理について
上で紹介したPK-12の取扱説明書にエッチング液、現像液の廃液処理方法が載ってますんで必ず読んでから始めてください。
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/datasheet/243028.pdf
廃液処理を正しく行うことはエッチング加工を行う上で非常に重要です。
廃液処理ができない人にはエッチング加工を行う資格はありません。
廃液は人体や環境に有害な物質です。
厳重に保管の上、しっかりと管理し、適切に処理してください。
今回紹介した3つの方法以外にもCADデータを使用して基板製作会社へ外注依頼しても意外と安かったりするらしいですが、私はまだ試したことがありません...
試してよかった業者さんなどおられましたら是非お教え下され~
どの製作方法でも、しっかりと準備を行った上でとりあえずやってみましょう。
2~3枚作れば要領が分かりますから、そこからはもう楽勝で基板製作できますよ~
ではでは~